いきなりOpenFOAM (42)

ボトルへの注水(その1)

解析モデルとXSimでのメッシュ設定

 今回は自由表面解析の応用例として、ボトルへの注水をOpenFOAMで解析してみます。モデルは図1に示すように、直径100mm、高さ350mmで、直径10mmのノズルから水が10-4m3/sでボトル内に供給されます。

図1 解析モデル

 解析モデルを面要素に分割し、ノズル底面をinlet、ノズルとボトルとの隙間をoutlet、ボトル内面をwallsとしてSTLファイルを出力します。
 次に、XSimでSTLファイルのインポートとスケール変更を行います。メッシュ設定は、目標ベースメッシュ数を一桁大きくし、図2に示すような円筒状の再分割領域を設定します。領域wallsに境界層をデフォルト設定で設定します。
 解析ファイルをエクスポートと展開し、端末から./Allrun –mと入力し、メッシュ分割を行います。端末でparaFoamと入力して、ParaViewを起動すると、生成されたメッシュを確認できます。

図2 再分割領域の設定
ひな型を利用した境界条件の設定

 次に、ひな型のファイルを修正します。(ひな形の利用については、いきなりOpenFOAM第35回第36回を参照してください)
 constantフォルダ内に、生成されたpolyMeshフォルダを移動します。続いて、Uファイル、alpha.water.origファイル、controlDictファイルの3つを図3、図4、図5に示すように修正します。
 controlDictファイルの時間刻みdeltaTはクーラン条件を満足するように設定します。適当な時間刻みで、短い時間の解析を行って、端末に表示されるクーラン数をもとに調整すると確実です。また、短い時間の解析結果をParaViewで読込み、水面を表示させて問題なく表示されるかの確認も必要です。メッシュが粗いと水面が表示されなくなります(VOF法ではメッシュ内のVOF関数値をもとに等値面を作成しますが、メッシュが粗いとVOF関数値が平均化され、境界が区別できない場合があります)。その場合は、XSimで再度メッシュ分割の設定とメッシュ生成を行ってください。

図3 0/Uファイルの設定
図4 alpha.water.origファイルの設定
図5 controlDictファイルの設定
計算実行とParaViewによる可視化

 端末で、interFoamと入力すると、計算が始まります。
 計算が完了したら、paraFoamと入力し、ParaViewを起動します。等値面でalphaが0.5の面を表示させると図6に示す水面形状が得られます。水面の表示方法については、いきなりOpenFOAM第34回を参照してください。

図6 注水から10秒後の水面形状

 File→saveAnimationとして、各時間の水面形状を保存した後、端末でconvertコマンドを用いることで、図7に示す動画を作成できます。詳しくは、いきなりOpenFOAM第34回を参照してください。
 図6および図7の動画を見ると、ノズルから注入された水はボトル内の水面に達すると、空気を巻き込みながら、ボトル底部へと流れることがわかります。

図7 水面の変化(アニメーション)

 水面形状をSTLファイルとして取り出し、ボトルへの注水のCG画像を作成してみます。ParaViewで水面形状のみを表示させ、file→saveDataとして拡張子STLを選択して保存します。CADで適当なボトルとノズルを作成し、先ほど保存したSTLファイルとボトルのモデルをCGソフトで読込み、スケール変更(OpenFOAMから出力されたSTLファイルのスケールはm)や材質の設定などを行うと、図8に示すような画像が得られます。現実の様子とは異なって見えるのは、水の体積部分がないためで、本格的なCG作成では、このあたりの処理作業も行います。

図8 水面のSTLファイルから作成したCG画像

 今回はボトルへの注水を解析し、空気が巻き込まれる現象を把握しました。次回は、ボトル底部の形状を変えて、空気の巻き込みの様子が変化するかを比較してみます。

 このページでは、各アプリケーションの操作説明は省略しています。FreeCADの具体的な操作については、いきなりOpenFOAM第5回および第7回、OpenFOAMでの計算実行は第8回、ParaViewの操作については第3回第4回および第8回を参考にしてみてください。

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