いきなりOpenFOAM (81)
ドローンのプロペラ周りの流れ(その6)
地面効果を考慮した解析モデル
ドローンは離着陸時には空中に浮遊した状態と比べて推進力が大きくなります。これは、地面効果として知られています。今回は、地面効果を考慮したモデルをOpenFOAMで解析して、地面効果を定量的に評価してみます。
図1に地面効果を考慮した解析モデルを示します。前回の解析モデルを平面でカットして地面に相当する面を作成します。今回はプロペラ中心から50mm下側に地面があるとします。なお、地面に相当する面は静止壁に設定するため、カットした球体はあらかじめ曲面と平面とに分離しておきます。
モデル形状の出力と計算
図1に示したモデルから、プロペラはblade.stlに、球体の曲面部分はbound.stlに、球体の下側平面はfloor.stlとして出力します。次に、ブラウザでXSimサイトに接続し、出力したstlファイルのインポートスケールの変更を行います。以降の処理は、いきなりOpenFOAM第77回と同じですが、メッシュ分割で領域floorにレイヤーを設定することと、流れ境界条件では、領域floorに静止壁を設定します。その他については、いきなりOpenFOAM第77回を参照してください。
解析ファイルを展開し、./Allrun –mでメッシュ生成、simpleFoamで計算を行います。
結果の可視化と推進力の比較
計算が完了したら、paraFoamと入力すると結果を可視化できます。図2は縦断面の流速分布を示したものです。図を見ると、プロペラを通過した流れは地面に相当する平面に衝突し、水平方向に向きを変えています。このため、プロペラは圧力の高い領域に乗っているような状態となり、より大きな推進力が得られます。
表1に、地面効果ありと地面効果なしでの推進力とトルクを示します。地面効果ありでは、地面効果なしと比較して、推進力が21%ほど増加することがわかります。
推進力[N] | トルク[Nm] | 回転速度[r/m] | 軸動力[W] | |
円弧翼(地面効果なし) | 5.71 | 0.22 | 6000 | 138 |
円弧翼(地面効果あり) | 6.92 | 0.24 | 6000 | 151 |
図3と図4にプロペラ平均径での静圧分布を示します。それぞれ、図3は地面効果ありの静圧分布、図4は地面効果なしの静圧分布です。図3の地面効果ありの静圧分布を見ると、翼腹側での静圧が、図4に示す地面効果なしの分布よりも大きく、これが、推進力が増加につながっていることがわかります。
今回はドローンプロペラの地面効果について解析を行いました。
次回からは、竹とんぼの飛行高度を予測する計算を行ってみます。
このページでは、各アプリケーションの操作説明は省略しています。FreeCADの具体的な操作については、いきなりOpenFOAM第5回および第7回、OpenFOAMでの計算実行は第8回、ParaViewの操作については第3回、第4回および第8回を参考にしてみてください。
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