いきなりOpenFOAM (77)

ドローンのプロペラ周りの流れ(その2)

解析モデル

 ドローン用のプロペラ設計では、プロペラの推力とプロペラへのトルクを求める必要がありますが、これらはプロペラ周りの流れの解析結果から得ることができます。そこで、プロペラ周りの流れを解析することから始めます。
 図1に解析モデルを示します。中心にプロペラを置き、プロペラよりも十分に大きな球体を設置します。球体表面は全圧0と仮定するため、プロペラにより生じる流れの影響が十分に小さくなるように、球体の径は大きくします。目安としては、球体の直径はプロペラ直径の10倍以上としますが、今回は、OpenFOAMの計算プロセスの説明のため、メッシュ数が大きくならないように、球体の直径はプロペラ径の5倍としています。なお、今回のプロペラは平板翼、すなわち平板を捩じっただけの簡単な形状としています。

図1 解析モデル

 図1に示すモデルから、プロペラはblade.stlに、球体はbound.stlとしてstlファイルを出力します。OpenFOAMは表面データを扱うため、プロペラと球体とは2つのソリッドでも、プロペラ部分が削除された球体でもどちらでもかまいません。

メッシュ作成と条件設定

 次に、ブラウザでXSimサイトに接続し、出力したstlファイルのインポートとスケールの変更を行います。メッシュ設定では、図2に示すように、目標ベースメッシュ数をデフォルトの10倍に設定します。また、計算領域の座標値をデフォルトの値から回転領域に含まれない位置に変更します。メッシュ生成では全体のメッシュを生成し、次いで回転領域を指定しますが、この際、全体のメッシュ領域を指定するのが、計算領域の座標値のため、この座標値が回転領域内とならないようにする必要があります。

図2 メッシュ設定

 次に、図3に示すように、プロペラを含むような位置、大きさで再分割領域を設定します。また、プロペラ表面bladeにデフォルトでレイヤーメッシュを設定します。球体の表面boundは開放状態となるので、レイヤーは不要です。

図3 再分割領域設定

 次に、基本設定で、「回転領域」にチェックを入れ、定常解析を選択します。
 物性設定では、物性として「Air」を選択します。
 初期条件では、速度を0に設定します。
 流れ境界条件では、boundに全圧0を、bladeに静止壁を設定します。
 そして、回転領域は、図4に示すように、領域タイプとして「円柱」を選択し、プロペラ周りに、円柱状の領域を設定します。回転速度は1秒間に100回転するものとして、36000°/sとします。詳細はいきなりOpenFOAM第69回を参照してください。

図4 回転領域設定

 次に、計算設定では、緩和係数をデフォルトよりも小さな値に設定します。今回は、速度、乱流エネルギー、乱流拡散率を0.7から0.5に、圧力を0.3から0.2に変更します。なお、緩和係数はモデルや計算条件により最適な値が異なります。したがって、./Allrun –mでメッシュ生成、simpleFoamで計算と2工程に分けて、計算が発散するなどで緩和係数の見直しが必要な場合は、systemフォルダ内のfvSolutionファイルをエディタで直接修正すると効率的です。詳しくは、いきなりOpenFOAM第25回を参照してください。

 出力設定などを行い、保存した解析ファイルを展開し、端末からコマンド./Allrun –mでメッシュ生成、simpleFoamで計算を行います。計算が完了したら、同様にparaFoamで、計算結果を可視化できます。

結果の可視化

 図5は、縦断面での流速分布を示したものです。プロペラ前方で流れは吸い込まれ、プロペラ後方では流速が増加し、流れが加速していることがわかります。プロペラに働く力はプロペラ表面の法線ベクトルとプロペラ表面の静圧との積を積分すると得られますが、ParaViewで上記の関数を用意するのは難易度が高いですが、OpenFOAMには、物体に働く力を出力する関数が用意されていて、これを使うと比較的容易にプロペラの推力とトルクとが求められます。

図5 断面流速分布

 今回はプロペラのモデリングと条件設定などを紹介しました。
 次回は、計算したプロペラから推力やトルクを出力する方法とその結果について説明します。

 このページでは、各アプリケーションの操作説明は省略しています。FreeCADの具体的な操作については、いきなりOpenFOAM第5回および第7回、OpenFOAMでの計算実行は第8回、ParaViewの操作については第3回第4回および第8回を参考にしてみてください。

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