ウイルス対策に有効な窓開け換気方法

 新型コロナウイルスやインフルエンザなど、ウイルスによる感染拡大を予防する方法として換気が推奨されています。今回は人が集まる学校教室を対象として、どのような窓開け方法が有効なのかを、コンピュータシミュレーションを使って比較してみます。

どのくらい換気すればいいのか?

 換気が奨励されていますが、どのくらい換気すればいいのでしょうか? 新型コロナウイルスに関しては、2020年4月現在、感染拡大を予防できる換気量のエビデンスは存在しません。 一方、国立感染症研究所は、同じウイルス性疾患であるインフルエンザに対して、感染経路に違いはあるものの、病院内の換気に関しては「結核院内感染予防策における換気回数と空気中の菌を除菌するための時間」(保健医療関連施設における結核感染予防ガイドライン2005)に準ずる方法を推奨しており、その中で空気中に浮遊する粉塵を除去するのに必要な換気回数*と時間が示されています。(表1)
*換気回数:1時間あたりの換気量/部屋の容積

表1 換気回数と空中浮遊粉塵除去に必要な時間

換気回数99%除去にかかる時間(分)99.9%除去にかかる時間(分)
2138207
64669
122335

 学校は医療施設とは異なりますので、直接比較はできませんが、上記のように比較的長い時間粉塵は空気中を漂い、換気回数を増やせば除去にかかる時間を短くできることが分かります。

計算モデルの教室

 今回対象とした教室は、3階建て校舎の2階中央部分にある教室(8.5m×8.0m)で廊下の幅は2mです。屋外の風は換気が促進されにくい無風状態とし、外気温は15℃、教室内の30名の生徒と照明による発熱で空気の循環が生まれる設定としました。
 教室の窓は屋外側、廊下側ともに上部にランマ窓があり、廊下の窓はランマ窓がないタイプです。

窓開けパターン

 教室の窓の開け方を6種類変え、それぞれの換気量を比較しました。なお、結果の比較がしやすいように、各ケースは換気の悪い順番に並んでいます。各ケースの窓開けの設定は下記のとおりです。(表2)

表2 ケース番号と窓開けパターン

ケース番号
 
教室窓
(屋外-教室)
教室-廊下間
 
廊下窓
(廊下-屋外)
ケース1全開、ランマ窓閉め閉め(全開)
ケース2全開閉め(全開)
ケース310cm 開け10cm 開け10cm 開け
ケース430cm 開け30cm 開け30cm 開け
ケース5全開、ランマ窓閉め全開全開
ケース6全開全開全開

※全開とは引き違い窓の片方をすべて開いた状態(幅約90cm)。
※(全開)は計算上の理由による設定で、教室の換気には寄与しない設定。
※教室-廊下間のドアは常に閉め。
※特に表記が無い場合は、ランマ窓も同じ幅で開いています。

計算結果

 換気の評価は空気齢という指標を用い比較しました。空気齢は各部分の空気がどれだけの時間(秒)室内に滞留しているかを示すもので、数値が大きいほど滞留時間が長い=外から空気が入ってこない(換気量が少ない)=換気が悪い、という指標になります。
 グラフは床から1.2mの高さにおける教室内の空気齢の平均値です。

床上1.2mの空気齢平均値
ランマ窓の効果

 一般家庭では少なくなりましたが、学校はランマ窓が付いているところが多いかと思います。ケース1と2はどちらも教室の屋外側窓しか開けない1方向の窓開けで、上部のランマを開けると開放面積は1.5倍です、換気量は約4倍になっています。これは、無風時には室内の発熱による上昇気流で換気が行われるため、高い位置に開口があるとより換気が促進されるためです
 ランマ窓に限らず、高い位置の窓は開けにくいですが、特に1方向しか窓開けできない場合は換気の促進に重要な役割を果たします。

2方向窓開けの重要性

 空気調和・衛生工学会は、2020年3月23日付けの「新型コロナウイルス感染症制御における『換気』に関して」と題した緊急会長談話の中で、窓のある環境では、可能であれば2方向の窓を同時に開け換気することが推奨されています。
 今回の検討ケースの中で、1方向の窓開け(ケース1と2)と、2方向の窓開け(ケース3~6)を比較すると、開放面積が狭いものもあるなか、すべてのケースで2方向の窓開けの空気齢が低く、換気が促進される結果となっています。 つまり、2方向の窓開けは換気促進に対して非常に効果が高く、窓全開の条件で1方向と2方向(ケース2と6)の空気齢を比較すると約14倍、ランマ窓が閉まった状態(ケース1と5)の比較では約31倍も空気齢が低下し、2方向窓開けの重要性が分かります。

開口幅による換気効果の違い

 ケース2,3,6は、2方向窓開けですが、開けている窓の幅が異なります。全体的な傾向としては、開放幅(面積)が大きいほど空気齢が低く、換気が促進されます。 しかし、全開の幅90cmから幅30cmと面積が1/3になった場合でも空気齢は1.8倍、幅10cmの面積が1/9になった場合でも、空気齢は3.4倍程度の延びにとどまっています。
 前に紹介したとおり、2方向窓開けは非常に大きな効果があるので、窓を大きく開けられない場合でも、2方向窓開けによって、開口面積以上の換気効果が期待できると言えます。

まとめ

 今回の検討から下記のことが分かりました。

2方向窓開けは、様々な状況で換気を促進する効果がありました。

開口面積は広いほど換気が促進されますが、面積が狭くても2方向窓開けができるのであれば、その効果は大きいです。

ランマ窓はやむを得ず1方向開放となる場合には極めて重要で、ランマ窓を閉めた状態ではほとんど換気できない状況になります。

おことわり
 今回の検討はある一定の条件下でのシミュレーション結果になります。異なる条件では違った結果や傾向になる場合があります。 また、このシミュレーション結果は実現象の再現を保証するものではありません