ウイルス対策に有効な窓開け換気方法(冷房時)

 新型コロナウイルスやインフルエンザなど、ウイルスによる感染拡大を予防する方法として換気が推奨されています。前回、学校教室を対象とした計算では、春先の自然換気を想定しましたが、今回は夏場のエアコン使用時を想定し、どのような窓開け方法が室内の冷気を逃がさずに換気できるかを、コンピュータシミュレーションを使って比較してみます。

エアコン使用時も換気が必要?

 あるエアコンメーカーが実施したアンケートによれば、一般的なエアコンが室内の空気を循環させているだけで、換気が行われていないことを半数以上の人が知らないという結果になっていました。 文部科学省も『学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル~「学校の新しい生活様式」~』のなかで、定期的な換気とエアコン使用時においても換気が必要としていて、これから夏場の暑い時期でも窓開けによる換気が必要であることがわかります。
 なお、新型コロナウイルスに関しては、換気の重要性は浸透しているものの、感染拡大を予防できる換気量など数値基準は示されていません。

計算モデルの教室

 今回対象とした教室は、前回と同様3階建て校舎の2階中央部分にある教室(8.5m×8.0m)で廊下の幅は2mです。屋外の風は換気が促進されにくい無風状態とし、外気温は夏場を想定して33℃、教室内の30名の生徒と照明、そして屋外に面している窓は南向きで、この窓は日射熱を受けると仮定しました。
 教室の窓は屋外側、廊下側ともに上部にランマ窓があり、廊下の窓はランマ窓がないタイプです。

エアコン位置と窓開けパターン

 教室に設置されているエアコンの位置を下記の3か所を想定し、それぞれの位置で、屋外側窓、屋外側ランマ窓、廊下側窓、廊下側ランマ窓の開け方を変えて計算を行いました。(全部で40ケースほどあるので個々の設定については割愛します)
 エアコンはどの条件でも同じ能力(同じ熱量を取ることができる)ものとしています。

 窓開けパターンは一般的な自然換気における空気の流れを想定して、教室内が効果的に換気できる方法を試行錯誤していきます。 一般的な自然換気では、夏場のように室内より屋外が暑い場合は、窓上部(もしくは高い位置にある窓)から外気が流入し、下部(もしくは低い位置にある窓)から流出します。 逆に冬場など室内のほうが温かい場合は、窓上部から流出し、下部から流入というパターンになります。夏場でも日射熱などの影響で外気より室内温度が高い場合は上部から流出というパターンになります。

計算結果

 換気の評価は前回同様、空気齢という指標で比較します。空気齢は各部分の空気がどれだけの時間(秒)室内に滞留しているかを示すもので、数値が大きいほど滞留時間が長い=外から空気が入ってこない(換気量が少ない)=換気が悪い、という指標になります。
 温度については、どのケースもエアコンの能力に差は無いので、エアコンの効果が高ければ室温が低く、逆に外の空気が多く入ってきてエアコンの効果が薄れると室温が高くなります。
 グラフは、各ケースにおける、教室内床上1.2mでの空気齢と温度の平均値の組み合わせで、横軸が空気齢(左にいくほど換気が良い)、縦軸が温度(下に行くほどエアコンの効果が高い)になっています。
 なお、換気をせず窓を閉め切った状態での平均温度(床上1.2m)は26.9℃となっています。
 全計算結果を換気および温度の傾向別にAからDの4つのグループに分類し、それぞれの窓開けの特長を見ていくことにします。

Aグループ(空気齢が非常に長い)

 全パターンのうちAグループの4ケースは空気齢が極端に長く、他のグループと比較して換気が悪いグループになります。 このグループはいずれも窓を1方向しか開けていないケースです。 前回同様、換気には2方向の窓開けが重要であることが分かります。

BからDグループの全体的な傾向

 BからDグループは、すべて2方向窓開けのケースになります。空気齢が短く新鮮な空気が多く入ってきているものほど温度が高く、空気齢が長くなるにつれて温度が下がっていく傾向にあります。 換気により33℃の外気が室内に入ってくるため当たり前の傾向ですが、室温が32℃から27℃と体感的に大きく違う一方で、空気齢は2倍の違いになります。 やや乱暴な計算ですが、一番換気できる状態を10分間続けて、その後10分間閉め切るのであれば、一番換気できない状態を20分間続けることで同じ換気量を確保できます。 今回の計算だけでは、10分間の開放でどの程度温度の上昇があるかは分かりませんが、温度変動が少ないほうがエアコンのエネルギーは少なくて済みます。

Bグループ(空気齢が短く温度が高い)

 グラフの左上、空気齢が短く換気が促進される一方、室内の温度が上昇してしまう窓開けのパターンは、いずれも屋外側窓(ランマ窓ではない下の窓)を開けているケースでした。 開口面積が大きいこともありますが、屋外側も廊下側も1つの窓の上部から暑い空気が流入し、下部から冷たい空気が出ていくという換気のパターンになっています。
 どのパターンも外気の流入量が多く、室温を保つにはエアコンの能力が足りない状態です。

Cグループ(空気齢が少し伸び温度が28℃前後)

 2方向換気の中間に位置するこのグループは、前のBグループと比較すると空気齢が少し長くなりますが、温度がかなり改善でき、平均で28℃前後になります。 元々窓を閉め切った時の温度が26.9℃であったので、そこから1℃前後の上昇で抑えられることになります。
 このグループのケースはすべて屋外側のランマ窓と廊下窓を開け、屋外側の窓(下の窓)は開けないパターンになります。 ランマ窓を開ける位置よって多少の違いはありますが、屋外側の下の窓を開けていたBグループと比較して、同じ空気齢でも温度を2.5℃ほど下げられるものもあります。

Dグループ(温度が一番低い)

 2方向換気では一番空気齢が長い一方で、温度は27℃から28℃と、窓を閉め切った状態から1℃以内の上昇にとどまっています。
 このグループの窓開けパターンはCグループと同じですが、開ける面積を減らしたケースになります。その意味では別グループというよりは、Cグループの延長線上にあるものと言えます。 開ける窓は2か所のみで、屋外側もしくは廊下側のどちらかの開口幅を10cm(全開の1/9の面積)にしていますが、開ける面積が1/9になっても、空気齢が9倍延びるということはありません。 あくまで今回計算した中での話ですが、開ける幅を90cm(全開)から10cmにすることで、空気齢は40秒ほど伸び、温度は0.5℃ほど下がる、という結果になりました。
 元々、基準がありませんので、10cmの開口で十分なのかは分かりませんが、室内外の環境によって開口幅を調整することで、換気を重視したり温度を重視したりという使い分けができるのはないかと思います。

まとめ

 今回の検討から下記のことが分かりました。

屋外側ランマ窓と廊下窓を開ける組み合わせで、換気を確保しつつ冷房効果を高めることができる。

上記の組み合わせで、開口の幅を変えることで換気と温度を調整できる。

エアコンの位置による違いは小さく、室内の温度は窓の開け方に大きく影響される。

おことわり
 今回の検討はある一定の条件下でのシミュレーション結果になります。異なる条件では違った結果や傾向になる場合があります。 また、このシミュレーション結果は実現象の再現を保証するものではありません