夏場の換気は短時間で済ませたい

 新型コロナウイルスやインフルエンザなど、ウイルスによる感染拡大を予防する方法として、換気が推奨されています。前回は春先の中間期(春および夏のエアコンを使わない時期)を想定し、扇風機が換気促進に効果があるかを調べました。  (前回の記事はこちら
 今回は夏場を想定し、同じく窓を1面しか開放できない場合に、レンジフードやサーキュレーターを使って、できるだけ短時間で換気できる方法を探ってみます。

季節によって違う空気の流れ

 今回、夏場の換気について調べるのですが、一般的な窓開放による換気では、季節によって換気のされかた(空気の流れ方)が異なります。 つまりそれぞれの季節に合った適切な方法で換気をする必要があります。
 大きな違いは室内と屋外の温度および温度差です。典型的な例ですと、
 ・夏 → 室内:27℃ 屋外:33℃
 ・春と秋(中間期) → 室内:24℃ 屋外:22℃
 ・冬 → 室内:22℃ 屋外:3℃
 冬場は温度差が19℃もありますが、中間期は2℃しかありません。 ファンなどを使わない窓を開けただけの換気は、この温度差が大きいほど促進されます。 つまり換気が一番難しいのが春と秋、ついで夏、冬場は換気しやすい季節と言えます。
 また、空気の特性として、暑い空気は部屋の上のほうへ、冷たい空気は部屋の下に溜まります。 温度が違う空気が混ざろうとするときは、暑い空気が上を覆うように、冷たい空気は下に潜り込むように流れていきます。 つまり、室内の温度が高い中間期と冬場は、窓の下から外気が入ってきて、上から抜けるという流れ、夏場は逆に窓の下から室内の空気が抜けて、窓の上から外気が入ってくるという流れになります。 ちなみに、温度差がまったく無い場合は、窓を開けただけではほとんど換気されません。

換気回数2回とは?

 さて、新型コロナウイルスの予防として3密を避けることが広く知られていますが、そのうちの換気について、厚生労働省は窓の開放による方法として、換気回数を毎時2回以上(30分に一回以上、数分間程度、窓を全開する。)としています。
 ここにある「換気回数」とは、「1時間に部屋の空気が何回入れ替わるか」という指標になるのですが、括弧書きの「30分に一回以上、数分間程度・・・」が一人歩きしてしまい、換気回数が窓を開ける回数と誤解されているケースも少なくありません。
 改めて、換気回数=2回は、1時間に部屋の空気が2回入れ替わることを意味します。 今回想定している集合住宅のリビングダイニング(約15畳)は、部屋の容積が約60立法メートルなので、1時間に120立法メートルの空気を入れ換えると換気回数が2回になります。

モデル住戸および条件

 今回も、集合住宅の約15畳のリビングダイニング(一部キッチンを含む)を対象として、窓は奥行き2mのバルコニーに面する、幅1.9m、高さ1.95mの引き違い窓とし、窓全開の場合は半分の95cm幅になります。
 また、前回と異なり、部屋を27℃で空調してある状態から窓を開け、その後10分間の時間経過を調べました。その他の条件は表1のとおりです。

表1 計算条件一覧

換気前の室内温度27℃
屋外風および外気温度無風、33℃
レンジフードの風量毎時600立法メートル(強運転)
サーキュレーターの高さ中心が床から15cm
サーキュレーターの羽根径15cm
サーキュレーターの風速3m/s(中~強運転)、屋外に向けて送風
窓の開放幅95cm(全開)または10cm
検討ケース

 今回の検討ケースは、レンジフードの運転、サーキュレーターの運転、窓の開放幅の組み合わせで、下記のようになっています。

表2 検討ケース一覧

ケース名レンジフードサーキュレーター窓開放幅
ケース1停止なし全開(95cm)
ケース2運転なし全開(95cm)
ケース3運転なし10cm
ケース4停止あり全開(95cm)
換気の時間変化

 室内に充満している換気が必要な汚い空気(赤色)が、窓を開けることによってきれいな空気(透明)に入れ替わっていく様子を示しています。

●ケース1
 ケース1はレンジフードもサーキュレーターも使わず、ただ窓を開けただけの場合です。

 窓を開けた直後は窓上部から外気が勢いよく流入し、換気がされはじめますが、すぐに変化が少なくなり、10分後も部屋の下半分はほとんど換気されていない状態で残っています。 部屋の下側に残るのは、元々室内の空気が27℃と外気と比べて低いのと、バルコニーの手すりがコンクリートでできており、空気が抜けない仕様になっているためです。

●ケース2
 次は、レンジフードを強運転して窓を全開にしたケースです。 レンジフードは玄関ドアが開かなくなるほど強力で、強運転は1時間あたり600立法メートルの空気を排気できます。 これは、今回の部屋では換気回数10回に相当するので、素早い換気が期待できます。

 ただ窓を開けただけのケース1よりは換気が促進されていますが、このケースでも床付近に換気されない汚い空気が溜まってしまっています。
 レンジフードは強力でしたが、どうやら窓の上から入ってきた外気が、そのまま部屋の上のほうを抜けてレンジフードに吸い込まれているようです。 つまり、途中からはレンジフードがきれいな空気を一所懸命排気しているという状態になってしまいました。

図3 ケース2の換気イメージ

●ケース3
 ケース2が少々企画倒れだったので、ケース3では窓の開放幅を絞って(10cmにして)、開いている部分全体から外気が入ってくるようにしました。

 この場合は、床付近も外気が入ってくることで、汚い空気が溜まることなく、部屋全体を素早く換気できていることが分かります。

●ケース4
 最後のケースは前回もありましたが、扇風機やサーキュレーターで室内の空気を排出する方法です。 今回はサーキュレーターを窓の前に置き、外向きに送風したケースになります。

 夏場の換気で部屋の下のほうに汚い空気が溜まるという問題をこのサーキュレーターが解決しています。 部屋の隅に少し汚い空気が残りますが、部屋全体としてはレンジフードを使うよりも素早く換気ができています。
 今回はサーキュレーターにしましたが、扇風機でも同じ効果が得られると考えられます。

換気回数2回を実現するために

 図4は、室内に入ってきた外気量の累計を時間経過で比較したものです。

図4 換気量(累計)の時間経過グラフ

 ここで注目するのは、累計換気量が60立法メートルのところです。 この60立法メートルは検討した部屋の換気回数1回に相当します。 つまり、この換気回数1回を得るために必要な窓開け時間がここから分かり、どの方法が一番素早く換気できるかが分かります。

表3 換気回数1回のために必要な窓開け時間

ケース名換気回数1回のための窓開け時間
ケース118分30秒 推定値
ケース24分40秒
ケース36分00秒
ケース45分08秒

 このように、室内に入ってきた外気の量だけに着目すると、ケース2が最も速く換気でき、ケース1はその約4倍の時間がかかる結果となりました。
 そして、これらの時間は換気回数1回分ですので、推奨される換気回数2回にするためには、1時間に2回窓開けをする必要があります。ケース2からケース4は5分前後を1時間あたり2回行うことで実現できそうですが、ケース1の場合は、1時間で37分開けておかないと、換気回数が2回になりません。

厳密な換気としては

 さて、上の結果ではケース2の換気が最も速く換気できる結果になりました。 ただ、アニメーションの結果では、ケース2は室内の下半分に汚い空気が残っていました。
 一般的な部屋ではところてん式に外から入ってきた分、元々あった空気が出ていくわけではなく、混ざり合いながら排気されます。 つまり排気した空気の中には新鮮な空気も含まれているということです。
 新型コロナウイルスに限らず、換気の一番の目的は汚い空気を排気することです。 図5は元々室内にあった空気がどれだけ残っているかを、時間経過で比較したグラフです。

図5 残留室内空気の時間経過グラフ

 例えば5分後(300秒後)に着目すると、ケース4の残留量が一番少なく34%程度である一方、上記の外気流入量の視点では一番効率が良いと思われたケース2は50%弱残っている結果となっています。
 つまり元々室内にあった空気を排気するという観点ではケース4のサーキュレーターを使う方法が一番迅速かつ効果的な方法であると言えます。

残念ながら温度には裏技がない

 夏の暑い時期ですから、エアコンで冷やした空気を逃がすことなく換気したいのですが、元々室内にある冷えた空気=汚い空気なので、汚い空気を排気する=冷えた空気を排気するということになり、室温を上げずに換気するという裏技は無いと思われます。 今回の検討でも換気が促進できるケースほど(室内空気の残留割合が低いほど)室温が高くなっています。(図6)

図6 室内平均温度の時間経過グラフ

 今回の検討ではエアコンは運転していませんが、実際の部屋では換気中もエアコンを付けっぱなしにし、できるだけ短い時間で換気する(効率の良い換気方法を選ぶ)ことが換気と快適の両立につながるのではないでしょうか。

おことわり
 今回の検討はある一定の条件下でのシミュレーション結果になります。異なる条件では違った結果や傾向になる場合があります。 また、このシミュレーション結果は実現象の再現を保証するものではありません