いきなりOpenFOAM (95 最終回):サボニウス風車の流れ解析(その5)

端板付き羽根車

 前回のいきなりOpenFOAM第94回までの羽根車は上下端が開放状態であり、この開放された部分での圧力低下により、効率が低下している可能性があります。そこで、アルキメデス螺旋型羽根車上下端に図1に示すように、端板を取り付けて、解析を行ってみます。

図1 端板付き羽根車
解析モデルの作成と計算

 計算の手順はこれまでと同様です。図1に示す羽根車をblade.stlとして羽根車を出力し、XSimでスケールの変更を行います。エクスポート後の解析ファイルのtriSurfaceフォルダ内からblade.stlファイルを取り出し、サボニウス風車の流れ解析を行った解析ファイル内のblade.stlファイルを置き換えます。
 次に、メッシュ生成を行い、polymeshフォルダを取り出して、解析ファイル内のpolyMeshフォルダを置き換え、計算を行います。

風車特性と結果の可視化

 計算が完了したら、postProcessingフォルダ内のforces.datから羽根車に生じるトルクを読取り、周速比λと出力比Cpを計算すると、図2に示す風車特性が得られます。風車特性の算出は、いきなりOpenFOAM第92回を参照してください。
 図2で、実線は上下端に端板がある場合の風車特性を、破線は端板がない場合の風車特性を示します。図2から、端板により出力比が約1.6倍に増加していることがわかります。

図2 風車特性

 端板により効率が向上する理由を探るため、羽根車内での静圧分布を見てみます。図3は端板付き羽根車の幅方向中心の縦断面での静圧分布を示します。また、図4は端板なしでの同様に静圧分布を示します。
 先に図4の端板が無い羽根車の圧力分布を見ると、後方(図の右側)の羽根車前方の正の圧力領域が羽根車上下端で小さくなっていることがわかります。一方、図3の端板付き羽根車では、後方の羽根車前方の正の圧力領域は高さ方向で一様となっています。このことから、羽根車端部が開放された状態では、羽根車に発生する圧力が低下し、効率が低下したものと考えられます。

図3 縦断面静圧分布(端板あり)
図4 縦断面静圧分布(端板なし)

 羽根車に発生する圧力が端部の状態により変化する理由を、羽根車内部の流速分布で見てみます。図5は、端板付き羽根車の幅方向中心の縦断面での流速分布を、図6は端板なしの流速分布です。
 図6の端板なしの羽根車では、中央付近で羽根車内に空気が流入し、後方で空気が流出していることがわかります。また、流入する空気により、前方の翼に上下2対の渦が発生しています。一方、図5の端板ありの羽根車では、上下端からの空気の流入出は無く、後方の翼に上下2対の渦の発生が見られます。以上のように端部が開放された状態では、羽根車内への空気の流入出により、羽根車内での渦のパターンが変化することがわかります。

図5 縦断面流速分布(端板あり)
図6 縦断面流速分布(端板なし)

 今回は、前回よりさらに効率の良い羽根車を目指して、羽根車の上下を塞いだモデルを解析してみました。その結果、最初に計算した、上下端が開放された円弧翼の羽根車での出力比が約6%であったのに対して、上下に端板を設けたアルキメデス螺旋型羽根車では、出力比は約16%と、2.5倍に効率が改善されることがわかりました。

最後に

 OpenFOAMなどの数値流体解析(CFD)を用いることで、設計手法が確立していないものや、前例の無いもの、実測や実験が困難なものでも、その効果や影響を事前に把握することができます。

 オープンソースで誰でも利用できるOpenFOAMを、より多くの方に使っていただけるように企画した「いきなりOprnFOAM」も、後半は内容が専門的になりすぎてしまった反省や、新バージョンのOpenFOAMへの対応など、将来の新たなコンテンツに向けて、今回の95回で終了となります。
長きにわたりご購読いただきまして、誠にありがとうございました。

 このページでは、各アプリケーションの操作説明は省略しています。FreeCADの具体的な操作については、いきなりOpenFOAM第5回および第7回、OpenFOAMでの計算実行は第8回、ParaViewの操作については第3回第4回および第8回を参考にしてみてください。

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