いきなりOpenFOAM (94):サボニウス風車の流れ解析(その4)
サボニウス風車の羽根形状
サボニウス風車は2つの羽根に働く抗力のバランスでトルクを発生するため、様々な形状を設計することができ、最適設定に関する研究も数多くされています。そこで、前回は単純な円弧でしたが、今回は螺旋形状の羽根の場合に風車特性がどう変わるかをOpenFOAMによる解析で確認してみます。
アルキメデス螺旋形状の作成と計算
アルキメデス螺旋とは回転角と半径とが比例する螺旋です。前回のモデルは中心が100mmずれた半径150mmの円弧であるため、0度で半径100mm、180度で半径250mmとなる螺旋を羽根とすると、図1に示す螺旋状の羽根車となります。

blade.stlとして羽根車を出力し、XSimでスケールの変更を行います。エクスポート後の解析ファイルのtriSurfaceフォルダ内からblade.stlファイルを取り出し、サボニウス風車の流れ解析を行った解析ファイル内のblade.stlファイルを置き換えます。次に、メッシュ生成を行い、polymeshフォルダを取り出して、解析ファイル内のpolyMeshフォルダを置き換え、計算を行います。
風車特性と結果の可視化
計算が完了したら、postProcessingフォルダ内のforces.datから羽根車に生じるトルクを読取り、周速比λと出力比Cpを計算すると、図2に示す風車特性が得られます。詳細は、いきなりOpenFOAM第92回を参照してください。
図2で、実線はアルキメデス螺旋型羽根車での風車特性を、破線は円弧型羽根車での風車特性を示します。図2から、アルキメデス螺旋型羽根車では円弧型羽根車に対して、出力比Cpが約1.5倍となっていることがわかります。

アルキメデス螺旋型羽根車で効率が向上する理由を探るため、羽根車内での静圧分布を見てみます。図3はアルキメデス螺旋型羽根車の高さ方向中心断面での静圧分布を、図4は円弧型羽根車の同じく静圧分布を示します。
サボニウス風車では、図の下側の翼に働く力と上側の翼に働く力が相互に逆向きに作用し、羽根車に回転力を発生させています。図3と図4を比較すると、図3のアルキメデス螺旋型羽根車では、上側の翼に発生する負圧は、図4に示す円弧型羽根車の上側の翼に発生する負圧よりも絶対値が小さいことがわかります。このことから、羽根車の回転を妨げる上側の翼に働く力が小さくなり、効率が向上したものと考えられます。


上側の翼に発生する負圧に違いが発生する理由を、羽根車相対流速分布で見てみます。図6の円弧型羽根車の相対流速分布では、上側の翼の後方に渦が発生しているのに対して、図5に示すアルキメデス螺旋型羽根車では、上側の翼の後方に発生する渦は小さくなっています。このことから、翼後方に発生する渦が発生する負圧に影響していたものと考えられます。


今回はサボニウス風車の羽根車の形状が風車特性に及ぼす影響を確認しました。次回は、さらに効率の良い羽根車を目指して、羽根車の上下を塞いだモデルを解析してみます。
このページでは、各アプリケーションの操作説明は省略しています。FreeCADの具体的な操作については、いきなりOpenFOAM第5回および第7回、OpenFOAMでの計算実行は第8回、ParaViewの操作については第3回、第4回および第8回を参考にしてみてください。
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