いきなりOpenFOAM (93):サボニウス風車の流れ解析(その3)

羽根車の回転と影響

 いきなりOpenFOAM第91回の計算は、MRF機能を用いていたため、羽根車が固定されていた状態でした。実際の羽根車は回転するため、流れに対する角度によって、発生するトルクは変化すると考えられます。
 回転系の計算には、移動格子を用いた解析もあり、この場合、計算上も羽根車が回転するため、回転に伴うトルク変動を求めることが可能です。ただし、非定常計算となるため長い計算時間が必要です。詳細は、いきなりOpenFOAM第68回を参照してください。
 そこで、今回は、羽根車を特定の角度だけ回転させたモデルを複数作成し羽根車の回転の影響を見てみます。

回転モデルの作成と計算

 回転角度0度は図1に示すように、流れに対して羽根車凹面と凸面とが向かい合う状態として、反時計回りに一定角度だけ回転させたモデルを作成しますが、羽根車が180度で回転対称のため、0から150度まで30度ずつ回転させたものにします。
 羽根車の回転はXSimの「形状のインポート」の「形状の編集」タブで、領域としてbladeを選、タイプは回転を選択し、回転軸方向はZ軸、回転軸位置は原点にして、回転角度を30°と入力し、「適用」をクリックすると、羽根車は反時計回りに30度回転します。その他の条件設定を行い、エクスポートで解析ファイルを出力します。
 最初のモデルをエクスポートした後、再度、「形状の編集」タブで「適用」をクリックすると、羽根車はその位置から30度回転します。その他の設定は自動で引き継がれますが、メッシュの計算領域を指定する座標はデフォルトのモデル中心に戻るため、この座標は羽根車を回転するたびに変更する必要があります。

図1 回転角度0度の羽根車位置

 すべての角度で解析ファイルのエクスポートと、メッシュ生成、計算を繰り返し、計算結果からそれぞれの角度でトルクを求めます。羽根車に発生するトルクの求め方は、いきなりOpenFOAM第78回を参照してください。

トルク変動の結果の可視化

 各角度におけるトルク値を算出し、グラフにまとめたものが図2となります。
 図2を見ると、角度が60度付近で羽根車には負のトルクが発生する以外は、正のトルクが発生しています。また、平均トルクは角度0度でのトルクとほぼ等しいため、前回の羽根車が角度0度での風車特性は平均的な値を示していると考えられます。

図2 回転角度によるトルクの変動

 各角度での圧力分布と相対流速分布とを図3から図8に示します。発生するトルクが負となる図5に示す角度60度での圧力分布を見ると、回転中心に対して羽根車左上に発生する正・負の圧力差が羽根車右下に発生する正・負の圧力差よりも大きく、結果として羽根車に対して時計回りの力を与えることがわかります。
 また、図6に示す流れに対して90度の角度では、羽根車右上の負圧域と羽根車左上の負圧域とにより、羽根車に対して反時計回りの力を与えることがわかります。
 最大のトルクを発生する図7に示す角度120度では、正の圧力領域は回転中心側に位置し、一方、負の圧力領域は回転中心から離れた位置にあり、結果として羽根車に対して反時計回りに大きな力を与えているものと考えらます。

 今回はサボニウス風車の羽根車の角度によるトルクの違いを計算してみました。次回は、羽根車形状を変更した場合の特性の違いを解析してみます。

 このページでは、各アプリケーションの操作説明は省略しています。FreeCADの具体的な操作については、いきなりOpenFOAM第5回および第7回、OpenFOAMでの計算実行は第8回、ParaViewの操作については第3回第4回および第8回を参考にしてみてください。

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