いきなりOpenFOAM (91)
サボニウス風車の流れ解析（その1）
サボニウス風車
サボニウス風車は、図１に示すように中心のずれた２つの円弧を組み合わせたものです。例えば、図の左手前から右奥に空気が流れると、羽根車は上から見て反時計回りに回転しますが、羽根車は、回転対称となっているため、流れ込む空気の向きには関係なく、常に反時計回りに回転します。また、弱風でも回転し、設置場所を選ばないため、小型の風車として広く普及しています。
今回は、図１に示すように、半径150mmの円弧を中心から100mmずらして組み合わせたもので解析を行ってみます。
解析モデルと条件設定
図2に示すようにサボニウス風車を囲む直方体を作成し、解析モデルとします。直方体左手前の面をinlet、右奥の面をoutlet、側面をside、また、サボニウス風車はbladeという名称でstlファイルに出力します。直方体の大きさは境界条件の影響を受けない程度に大きくします。一般的には羽根車径の10倍以上としますが、今回は例題のため小さなモデルとしています。
ブラウザでXSimサイトに接続し、出力したstlファイルにインポートとスケールの変更を行います。メッシュ設定では、図3に示すように、目標ベースメッシュ数をデフォルトの10倍に設定します。また、計算領域を指定する座標が回転領域内に含まれないように、デフォルトの値から変更します。
次に、図4に示すように、羽根車を囲むように円柱形状で再分割領域を設定します。また、羽根車表面にも再分割領域とレイヤを設定します。
基本設定では、「定常解析」を選択し、「回転領域」にチェックを入れます。物性設定では、「Air」を選択します。また、流れ境界条件では、図5に示すように、inletにはy軸正の向きに5m/sの流速一定を、outletには「自然流入出」を、sideには「すべり壁」を、bladeには「静止壁」を設定します。
回転領域では、図6に示すように、羽根車周りに円柱状の領域を設定します。回転速度は複数例を計算させるため、０にして、MRFpropertiesファイルを直接編集します。回転方向など設定の詳細は、いきなりOpenFOAM第69回を参照してください。
計算設定では、緩和係数をデフォルトよりも小さな値に設定します。今回は、速度、乱流エネルギー、乱流拡散率の緩和係数を0.7から0.5に、圧力の緩和係数を0.3から0.2に変更します。設定の詳細は、いきなりOpenFOAM第25回を参照してください。
出力設定などを行い、エクスポートで解析ファイルを出力します。次に、MRFpropertiesファイルをエディタで開き、omega constantの値を周速比0.5に相当する5×0.5/0.25=10rad/sに変更します。詳細は、いきなりOpenFOAM第86回および第87回を参照してください。
ファイルの修正が完了したら、端末から./Allrun –mでメッシュ生成、simpleFoamで計算を実行します。
結果の可視化
図7は、高さ方向中心断面での静圧分布を示します。空気は図の左から右に流れています。図7の下側の湾曲した面の左側には正の圧力が働き、羽根車に対して反時計回りの力を与えていますが、同時に、上側の湾曲した面の左側にも正の圧力が働き、羽根車に対して時計回りの力を与えています。羽根車から得られるトルクは、湾曲した面に働く流れの抗力を基にしているため、抗力型と呼ばれています。また、2つの湾曲した面に働く抗力の差分が得られるトルクとなるため、プロペラ風車などの揚力型と比べると、効率が低くなります。
図8は、高さ方向中心断面での羽根車に対する相対流れを示しています。相対流れの表示方法は、いきなりOpenFOAM第70回を参照してください。下側の湾曲した面に流入した空気は、一部は図の下向きに流れ、他は湾曲した面同士が交差する隙間を通って、上側の湾曲した面に流れることがわかります。また、上側の湾曲した面に流れ込んだ空気は渦を形成し、この部分が上側の湾曲した面に発生する負圧領域となっていることがわかります。
次回は、今回の結果から羽根車に加わるトルクを算出し、周速比と出力比を求めてみます。
このページでは、各アプリケーションの操作説明は省略しています。FreeCADの具体的な操作については、いきなりOpenFOAM第5回および第7回、OpenFOAMでの計算実行は第8回、ParaViewの操作については第3回、第4回および第8回を参考にしてみてください。
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