いきなりOpenFOAM (66)

スロッシング現象(その4)

仕切り板の設置

 これまで、インパルス応答を使って、スロッシング現象の周波数特性を解析してきましたが、今回は、タンク内に仕切り板を設けた場合の周波数特性を解析してみます。
 適当に仕切り板を設置してみるという方法もありますが、CFD解析結果から対策を検討してみます。図1は仕切り板が無い場合の、加振開始から0.5秒後の断面流速分布です。加振周期は1秒のため、図1はタンクが右側に移動しきった状態です。図を見ると、タンク内の液体が右側面に衝突し、上向きの強い流れを生じていることがわかります。そこで、タンク側壁に水平に仕切り板を設置すれば、上向きの流れを阻害して、液体の揺動を抑えられると考えられます。そこで、タンク両側壁に水平方向に長さ100mmの仕切り板を設けたモデルが図2です。

図1 加振開始から0.5秒後の断面流速分布(仕切り板なし)
図2 側壁に水平方向に長さ100mmの仕切り板を設置したタイプ

 もう1つ、図3の加振開始から0.8秒後の状態(タンクは左側に移動する途中の状態)を見ると、タンク内の液体が右から左に移動していることがわかります。こちらは、タンク中央に縦に仕切り板を設ければ、この流れを阻害して、タンク内の液体の揺動を抑えられるかもしれません。そこで、タンク中央に縦に500mmの仕切り板を設置したモデルが図4です。

図3 加振開始から0.8秒後の断面流速分布(仕切り板なし)
図4 タンク中央に高さ500mmの仕切り板を設置したタイプ
モデルの出力と計算実行

 以上のモデルをそれぞれwallsというstlファイルに出力し、いきなりOpenFOAM第59回と同様に、XSimでメッシュ生成用のファイルを出力し、端末から./Allrun –mでメッシュを生成させます。いきなりOpenFOAM第63回で解析に利用したフォルダ内constantフォルダ内のpolymeshフォルダを今回生成したフォルダで置き換えます。解析後に生成されるファイル類やalpha.waterファイルはあらかじめ削除した後に、端末からsetFields、interFoamの順にコマンドを入力すると計算が始まります。計算が終了すると、postProcessingフォルダ内に液面の時間変動を記したファイルが出力されています。詳細は、いきなりOpenFOAM第63回を参照してください。

結果の出力とインパルス応答波形

 次に、いきなりOpenFOAM第65回のcsvファイルの読取りと同様にして、postProcessingフォルダ内に出力された液面の時間変動をグラフ化すると、図5から図7が得られます。図5は仕切り板なしの応答波形、図6は側壁に水平方向に仕切り板を設置の応答波形、図7は中央に縦に仕切り板を設置の応答波形です。図の横軸は時間で、縦軸は液面の中立位置からの差で、右側側壁から50mmの位置での液面変動を表しています。
 図6を見ると、応答波形は急速に減衰し、液面の揺動が抑えられていることがわかります。一方、図7を見ると、波形が密となっていて、周期が短くなっていることがわかります。

図5 インパルス応答波形(仕切り板なし)
図6 インパルス応答波形(側壁に水平仕切り板を設置したタイプ)
図7 インパルス応答波形(中央に垂直仕切り板を設置したタイプ)

今回は、タンク内に設置した仕切り板の効果を、それぞれのインパルス応答で比較しました。
 次回は、インパルス応答波形から振幅倍率の周波数特性を計算し、仕切り板なしの場合と比較してみます。また、いきなりOpenFOAM第59回と同様に1Hzで震度5強相当の加振を行った場合の仕切り板の効果についても比較してみます。

 このページでは、各アプリケーションの操作説明は省略しています。FreeCADの具体的な操作については、いきなりOpenFOAM第5回および第7回、OpenFOAMでの計算実行は第8回、ParaViewの操作については第3回第4回および第8回を参考にしてみてください。

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