いきなりOpenFOAM (58)

スロッシング現象(その1)

スロッシング現象とメッシュ移動機能

 スロッシングとは、タンクなどの容器内の液体が外部からの振動によって揺動することを言います。スロッシングは、液体の漏洩や容器の破損などの原因ともなります。

スロッシング(Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%B0

 メッシュ移動機能を用いることで、任意形状の容器に振動を与えた場合のスロッシング現象を解析できます。振動の条件に地震動を模したものを設定することで、地震時のスロッシング現象を計算することができますが、地震現象は震度と呼ばれる指標で表されるのに対して、メッシュ移動機能では変位と周期というパラメータを設定する必要があります。
 そこで、今回は、震度についての説明と、震度から加速度へ、加速度から変位と周期へと変換する方法について説明します。

震度から加速度、変位、周期を求める

 地震の大きさは、現在はマグニチュードで表されていますが、以前は震度で表されていました。マグニチュードが地震そのものの大きさを表すのに対して、震度はそれぞれの場所での揺れの強さを表すという違いがあります。スロッシング現象では、その場所の揺れが影響を及ぼすため、震度を用います。
 震度は、以前は周囲の揺れなどから決定していましたが、現在は、加速度計で計測された加速度を周波数フィルタにかけて、時間累計が0.3秒となる加速度閾値から求めます。計算方法などは、下記リンクを参照してください。

計測震度の算出方法(気象庁)
https://www.data.jma.go.jp/eqev/data/kyoshin/kaisetsu/calc_sindo.html

 震度から加速度を求める場合は、図1を用いて、特定の震度となる加速度と周期の組み合わせを求めます。例えば、震度5強の場合、周期1秒で加速度1m/s2の振動が相当します。なお、このグラフは均一な周期の振動が数秒間継続した場合を想定したものです。

図1参照元(気象庁):https://www.data.jma.go.jp/eqev/data/kyoshin/kaisetsu/comp.html

図1 周期および加速度と震度との関係

 次に、OpenFOAMのメッシュ移動機能を設定するdynamicMeshDictファイルの設定について説明します。地震が主に水平振動であると想定し、dynamicMeshDictファイルのsolidBodyMotionFunctionは、oscillatingLinearMotionを用います。パラメータのomegaは角速度で表示するため、例えば前述の震度5強相当の周期1秒であれば、2π=6.28となります。
 そして、加速度からamplitudeすなわち変位振幅の2倍を求めます。前述の震度5強相当の加速度1m/s2は実効値となります。加速度振幅に直すには、実効値の√2倍が振幅となります。また、下の式のように加速度は変位の2階微分であるから、変位振幅は加速度振幅の1/(4・π2・f2)となります。
 変位 [m] = A・cos(2π・f)
 加速度 [m/s2] = -A・4・π2・f2・cos(2π・f)
 ここで、Aは変位振幅[m]、fは周波数[Hz]です。
したがって、加速度実効値がα[m/s2]となるamplitudeは、

となります。
 前述の震度5強相当であれば、dynamicMeshDictファイルのパラメータはamplitudeが0.072でomegaが6.28となります。

 今回は、震度からメッシュ移動に必要なパラメータの算出方法を説明しました。
 次回は実際に震度5強相当の振動を与えた場合のスロッシング現象をOpenFOAMで解析してみます。

 このページでは、各アプリケーションの操作説明は省略しています。FreeCADの具体的な操作については、いきなりOpenFOAM第5回および第7回、OpenFOAMでの計算実行は第8回、ParaViewの操作については第3回第4回および第8回を参考にしてみてください。

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