いきなりOpenFOAM (29)

ブンゼンバーナーの解析

解析モデル

 今回はOpenFOAMを用いて、ブンゼンバーナー(ブンゼンバーナーとは?:Wikipedia)のガスと空気との拡散現象を解析してみます。OpenFOAMは燃焼解析も可能ですが、今回は扱いません。ブンゼンバーナーは、ガスの流れにより一次空気を供給する構造のバーナーで、理科の実験で使った方も多いのではないでしょうか? また、業務用としては、道路工事の際にアスファルトの加熱に用いられるバーナーもブンゼンバーナーに類しています。なお、今回は簡略化したモデルで計算を進めていきます。
 プロパンガスを用いるとして、理論空気量を求めます。理論空気量とは、完全燃焼に必要な最小の空気量で、プロパンガスの反応では下記のように、プロパンガス1に対して、酸素は5必要となります。空気中の酸素濃度は21%なので、プロパンガス1m3の理論空気量は5/0.21=23.8m3となります。

燃焼筒は、中心に直径5mmのガス流入孔の開いた直径60mm、長さ100mmの円筒として、空気流入孔はとりあえず、ガス流入孔の24倍の面積とします。空気流入孔は4つの円孔とすると、直径は、

となります。燃焼筒の出口側に適当な大きさの空間を設けます。4つの円孔の回転対称構造なので、1/4分割モデルとして、図1に示す形状をCADで作成します。

図1 バーナーモデル
XSimでの設定

 ガスの流入口はinlet1に空気の流入口はinlet2として、stlファイルを出力し、図2に示すようにXSimにインポートし、サイズ変更を行い、図3に示すように、ガス流入孔を中心に再分割領域を設定します。

図2 モデルのインポート
図3 再分割領域の設定

 続いて図4に示すように、境界条件を設定します。ガスの流入速度は10m/sとし、空気流入口には自然流出入を設定します。物性は空気を指定し、流れ解析ができるように、その他の設定を行います。その他の設定方法については、いきなりOpenFOAM第7回第12回を参考にしてください。

図4 境界条件の設定
OpenFOAMでの計算

 XSimでエクスポートしたzip形式の解析ファイルを右クリック→展開として、ファイルを展開します。展開したフォルダ内で、マウス右クリック→端末を開くを選択し、ターミナルを起動します。Allrunファイルに実行権限を与えます。次いで、./Allrunと入力すると、メッシュ分割と計算が自動で行われます。
 OpenFOAMでの計算手順はこれまでと同じですが、ファイル操作などの詳細については、いきなりOpenFOAM第2回第8回を参照してください。

 解析が完了したら、正しく解析できているかParaViewを起動し、結果を確認してみます。図5は断面流速分布です。図を見ると、ガスの流れにより、空気が空気流入口から流入していることがわかります。ただし、流入する空気の流速はガスの流速に比べて非常に少なく、燃焼筒内部では完全燃焼の条件には至らないことがわかります。

図5 断面流速分布
拡散解析の準備と実行

 次に、拡散解析を行います。今回は、前回の拡散解析ファイルを一部修正して利用することにします。拡散解析用のフォルダを開いて、0フォルダ内のUファイルを流れ解析の最終サイクルの結果で上書きします。Tファイルのinlet1はvalueが1、inlet2はvalueが0とします。今回は回転対称面(領域名freeslip)が追加されているので、typeをzeroGradientとして、Tファイルに追加します。
 Constantフォルダ内のpolyMeshフォルダを流れ解析のpolyMeshフォルダで上書きします。transportPropertiesファイルの拡散係数を1e-5に設定します。
 Systemフォルダ内のcontrolDictファイルで、終了時間、時間刻み、出力タイミングを設定します。今回は、0.1秒まで、時間刻みは0.0001秒で計算させることにしました。
 ファイルの修正が終わったら、scalarTransportFoamを実行して拡散計算を行います。ファイル修正や計算実行の詳細は、いきなりOpenFOAM第27回第28回を参照してください。

ParaViewでの結果の可視化

 図6に、断面のプロパンガス濃度分布を示します。図を見ると、燃焼筒内ではプロパンガスは直進し、燃焼出口で急速に広がることがわかります。つまり、大部分のプロパンガスは燃焼筒を出てから周囲の空気と混合されることがわかります。ただし、燃焼筒内においても、プロパンガスのジェット周囲で濃度が低下していて、この部分でも燃焼反応が起きる可能性があることがわかります。

図6 プロパンガスの濃度分布

 プロパンガスの可燃範囲(燃焼できる濃度)は1.8~9.5%と言われています。そこで、0.018と0.095のプロパンガス濃度の等値面を表示させた結果が図7です。図を見ると、炎は燃焼筒を出てから広がることがわかります。また、燃焼筒内においてもプロパンガスのジェット外周は可燃範囲にあり、燃焼する可能性があることがわかります。

図7 可燃範囲(濃度 1.8~9.5%)の等値面

 今回は、ブンゼンバーナーを例に、ガス拡散計算を行ってみました。燃焼反応による酸素の減少や温度の上昇による浮力の効果などは考慮していないため、実際のバーナーにおける現象を正しくとらえているとは言えませんが、燃焼の予備段階としてのガス混合を可視化することができました。
 次回は河川に汚染物質が流入した場合の広がりをOpenFOAMで解析してみます。

 このページでは、各アプリケーションの操作説明は省略しています。FreeCADの具体的な操作については、いきなりOpenFOAM第5回および第7回、OpenFOAMでの計算実行は第8回、ParaViewの操作については第3回第4回および第8回を参考にしてみてください。

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